8度のゴールデングラブ賞と3度のベストナインを受賞し、ホークスでは正捕手として3度のリーグ優勝と4度の日本一に貢献し、国際大会では4度の世界一を経験した日本を代表する捕手である甲斐拓也選手。
彼が14年間プレーした福岡ソフトバンクホークスから国内FA権を行使して読売ジャイアンツへ移籍することを決断しました。
今後の挑戦に大いに期待したいところです。
ただ、これによって絶対的な正捕手が抜けるソフトバンクホークス。
2025年度のホークスの正捕手は誰になるのか気になります。
ということで、起用面を含めて考察していきます。
甲斐拓也選手ありきのチーム
近年の福岡ソフトバンクホークスは甲斐拓也選手ありきのチームでした。
2017年以降の甲斐拓也選手の一軍スタメン率がこちら。
そして甲斐選手の出場試合数とスタメン数の比較がこちら。
2017年こそ出始めの頃ということで髙谷裕亮選手との併用でしたが、徐々に信頼を勝ち取りレギュラーポジションを確固たるものとしました。
それがスタメン率の推移に数字として表れています。
また、2017,2018年と2023,2024年は2019~2022年と比べて出場試合数とスタメン数に開きがありますが、この意味は全く違います。
2017,2018年度に関しては単純に信頼を得られていなかったという部分が大きいです。
上図のようにベテラン捕手にも支えてもらいながら徐々に信頼を勝ち取っていきます。
2019~2022年度に関しては完全に自分の城を築きました。
2017,2018年に比べてベテラン捕手のスタメン率が圧倒的に下がってます。
そして2023,2024年度に関してはそろそろポスト甲斐を育成しておきたいという思惑が見て取れます。
特に2024年度は海野隆司選手が意図的に出場試合数を増やしました。
甲斐選手が凄いのは怪我をしないこと。
守備の安定感で彼に勝る選手はいませんが、打撃に関しては極度の大不振に陥る時期もあり隙はありました。
それでも戦線離脱をしませんし、首脳陣&投手陣からの信頼が厚いので、他の選手にチャンスすら回ってきませんでした。
まさに無敵状態です。
この絶対的正捕手が次の正捕手も定まっていない状況で移籍したということで、2025年のホークス捕手はどうなるか全く想像もつきません。
全ての捕手に均等にチャンスがあります。
ホークス捕手一覧
2024年12月19日時点でのホークスの捕手登録選手10名をまとめました。
彼らがどのような起用をされるかを考えていきます。
嶺井博希
2025年度でプロ12年目を迎える嶺井博希選手。
ホークスの捕手の中では最も一軍実績のある選手です。
持ち味は打撃。
一軍では通算打率.220,通算OPS.600と特別凄い成績というわけではありませんが、ここぞの場面で一本を打てる、そういう選手です。
代打も苦にしません。
ただ課題は守備。
スローイングとブロッキング。
キャッチャーにとって最も大切な2つの技術が他のホークス選手に比べてかなり劣ってます。
特にスローイングに関しては、刺せる走者がいないのではないかというぐらい、2024年シーズンは三軍でも二軍でも走られまくりました。
攻撃と守備のバランスを考えた時に嶺井選手がレギュラーで出続けることは非常に危険です。
打撃戦になった試合の途中出場、もしくは勝負所での代打という起用が無難かと思います。
また、将来性を考えても2025年シーズンで34歳を迎える嶺井選手がレギュラーを張れるような状況は何とか避けたいところです。
谷川原健太
2025年度でプロ10年目を迎える谷川原健太選手。
若手のような雰囲気がありますが、現在のホークス選手の中では年齢的に嶺井選手の次。
2025年4月16日で28歳になる中堅選手です。
そろそろ一軍でチームの中心選手になっておかなければなりません。
彼の持ち味はバランス。
打撃ではリストの強さを活かし、低くて鋭い打球で内野の間を抜く。
守備では捕手以外も器用に守れて肩がとんでもなく強い。
走塁では代走として起用できるぐらい足が速い。
身体能力が抜群です。
ただ課題は器用貧乏であること。
肩がとんでもなく強いとはいっても、それを完璧に二塁送球に落とし込むことができておらず、意外と盗塁阻止率は高くありません。
打撃でも良いものは持っていますが、2024年度は二軍で正捕手としてトータル74試合に出場しながら本塁打0本と長打力不足を露呈してます。
全てのポジションをある程度守れて、ある程度打てて、ある程度走れる。
その部門だったらもしかしたらトップかもしれません。
ただ、正捕手を勝ち取るためには、そこから脱却して一部門に特化する必要があります。
彼が一皮も二皮も剝けたら正捕手を勝ち取れるでしょうし、今のままでも競争の中で第二捕手を勝ち取れる可能性はあります。
海野隆司
2025年度でプロ6年目を迎える海野隆司選手。
2025年7月15日で28歳になる中堅選手です。
2024年シーズンは甲斐選手に次ぐ38試合にスタメン出場するなど、現在の捕手の中で首脳陣からの信頼が一番高い選手です。
おそらく海野選手は2025年シーズンの開幕時に間違いなくベンチ入りはしているでしょう。
そうしなければ、全体的に経験不足感が否めません。
彼の持ち味は守備。
2024年シーズンはトータルで51試合に出場しエラーはたったの1つ。
そして盗塁阻止率は.316(6/19)。
甲斐選手の盗塁阻止率.284(25/88)を上回っています。
この守備の安定感で1シーズン一軍帯同することができました。
ただ課題は打撃。
2024年シーズンは120打席に立って打率.173,OPS.504でした。
他の選手が打ちまくっていたので目立たなかったものの、レギュラーを張る選手の成績ではありません。
海野選手は打撃面で大きく成長すれば正捕手を勝ち取れますし、そうでなければ他の選手との兼ね合いにもなりますが第二捕手が濃厚です。
大友宗
2025年度でプロ1年目を迎える大友宗選手。
2025年7月23日で26歳になるオールドルーキーです。
若手選手というより中堅選手の方がしっくりきます。
1年目から結果が求められるという中で、正捕手の甲斐拓也選手がFA移籍。
大友選手はツイてます。
あとはこの「運」を「実力」で一気につかみ取るだけです。
持ち味も課題もまだ分かりません。
プロの選手の中で揉まれることで自分の強み弱みが浮かび上がってきます。
茨城アストロプラネッツでプレーした2024年シーズンは、右に左に広角に長打を放ち12本塁打の大活躍。
よって、まずアピールすべきは長打力です。
長打力をアピールした上で、海野選手ぐらい安定した守備を見せつければ、一軍の正捕手が見えてきます。
もし2025年シーズンのホークス捕手のアピールが不十分であれば、FA&トレード&ドラフト等で捕手の補強をするのは間違いありません。
よって最初で最後の大チャンスだと思ってプレーしてもらいたいです。
渡邉陸
2025年度でプロ7年目を迎える渡邉陸選手。
2025年9月24日で25歳になるのでもう若手というより中堅です。
背番号も79から00に変わり心機一転を図ります。
彼の持ち味はスケールの大きさ。
2022年シーズンでは一軍初スタメンで広島の森下投手から逆方向へ本塁打を放ち、その次の打席でも逆方向へ本塁打。
さらに楽天則本投手からも今度は引っ張って本塁打を放つなど大気の片鱗を存分に見せつけました。
ただ課題は安定感。
怪我にも苦しみ、ここ2年二軍でも安定した打撃成績を残せていません。(2023,2024年)
守備もこれからまだ上げていくべきところはありますが、彼の場合はまず打撃。
西武時代の森友哉選手のように多少のミスは打撃でカバーするぐらいのものを見せてほしいところです。
それができれば自ずと正捕手は見えてきます。
渡邉陸選手は後ろから出るタイプの選手ではないので、第二捕手は務まりません。
正捕手か二軍か、そういう起用になると思います。
打てれば捕手として起用されない試合も指名打者での起用があり得ます。
石塚綜一郎
2025年度でプロ6年目を迎える石塚綜一郎選手。
2025年9月24日で24歳になるのでギリギリ若手のイメージです。
彼の持ち味は打撃とユーティリティ性と体の強さ。
将来的にホークスのクリーンナップを張ってくれそうな選手です。
2023年度は三軍四軍戦で451打席に立ち22本塁打。
2024年度は二軍戦で142打席に立ち6本塁打。
だいたい20打席に1回は本塁打が出る計算です。
2024年度は一軍戦でも40打席に立ち1本塁打。
プロ初本塁打を記録しました。
この持ち味を存分に活かすために一塁手や外野手の練習をしていましたが、練習の成果が出たのかどのポジションも普通に上手いです。
栗原選手二世になれる逸材だと感じます。
また2023年度は三軍四軍戦で29個、2024年度は一軍から四軍戦すべて合わせて26個の死球を記録。
これだけ死球を喰らうのは強打者の証ですが、それで怪我をしないのが凄いです。
現時点で課題は特にありません。
ただ強いて言うなら経験です。
仮にこれから捕手として一軍の試合に出るとなった場合、石塚選手は2024年シーズンに捕手として1試合も出場していないのでまずそこのブランクと向き合わなければなりません。
そもそも2023年度まで育成選手だったということもあり、二軍で腰を据えてマスクを被った経験すらありません。
打てる選手だというのは過去の実績を見ても明確なので、あとは慣れかなと思います。
仮に経験不足による失敗があったとしても、それをバットで取り返せば何の問題もないです。
石塚選手の起用は様々考えられます。
もちろん正捕手の可能性が1つ。
次に主力のレフト柳田悠岐選手、ライト近藤健介選手、ファースト山川穂高選手が怪我をした場合のバックアップの可能性が1つ。
代打、守備固め、スタメン、何でもこなすユーティリティの可能性が1つ。
どれも有力です。
個人的には今一番レギュラーになる可能性が高い捕手で勝負してほしいところです。
牧原巧汰
2025年度でプロ5年目を迎える牧原巧汰選手。
2025年7月13日で23歳になる若手選手ですが、二軍で実績を作ったことがまだ無いので間違いなく勝負の年です。
彼の持ち味は打撃。
逆方向でも関係なく鋭い打球を放つことができます。
2023年度は三軍四軍戦で377打席に立ち11本塁打。
2024年度は三軍四軍戦で287打席に立ち11本塁打。
本塁打を打つ技術は間違いなく上がってます。
三軍でやることはほとんどありません。
ただ課題は守備。
安定感とは程遠く、スローイングもブロッキングも二軍レベルに達していません。
一生懸命さは伝わってくるものの、それが結果に表れていません。
牧原選手の起用はうまくいけば一軍の正捕手。
打って打って打って、守備を補って余りあるぐらいに打つことが求められます。
ただ、まだ二軍でも結果を残していないので、現実的には二軍の正捕手といったところでしょうか。
二軍で正捕手を張れたら、2025年オフに戦力外通告を受けることは無いと思います。
そして、2026年からは満を持して一軍で勝負です。
加藤晴空
2025年度でプロ4年目を迎える加藤晴空選手。
2025年4月28日で22歳になる若手選手ですが、三軍四軍で実績を作ったことがまだ無いので間違いなく勝負の年です。
彼の持ち味は走力と打席での粘り。
捕手でありながら、途中出場で代走起用されるくらいの走力があります。
また、少ない打席数しか与えられていないので、その1打席を何とかものにしようという気持ちが伝わる打撃を見せてくれます。
ただ、課題はそれ以外の全て。
三軍四軍を主戦場としていながら捕手としてのスタメン出場数が下の世代の盛島稜大選手や藤田悠太郎選手よりも少ない。
これははっきり言って首脳陣の彼に対する期待の無さを表しています。
試合に出た時に全く結果を残してないというわけではないですが、インパクトを残せていないのは事実です。
例えば途中出場した際に、投球を簡単に後ろに逸らしている部分を見ると準備不足を感じます。
風間球打投手や星野恒太朗投手は確かにコントロールが悪いですが、逆に言えばそういう投手の球を完璧に受け止めたら首脳陣からの評価はグンと上がります。
少ないチャンスを着実に活かし、徐々に出場機会を得る。
そうやって過去のスターは大きく羽ばたいていきました。
加藤選手も2025年シーズンがラストチャンスの気持ちでプレーしてもらいたいです。
加藤選手が今一軍でプレーする姿は正直見えません。
まずは二軍に上がること。
そのためには三軍四軍戦で結果を残すこと。
ただ打つだけではなく長打を増やし、塁に出たら確実に盗塁。
それぐらいのインパクトが欲しいです。
三軍の正捕手を務め、二軍に少しでも顔を出せるようになれば、2026年以降に期待感が高まります。
盛島稜大
2025年度でプロ3年目を迎える盛島稜大選手。
2025年5月27日で21歳になる若手選手です。
彼の持ち味はパワー。
2024年3月6日に行われた東海大学九州キャンパスとの練習試合では3打数3安打2本塁打4打点の大活躍を見せました。
あの時のインパクトが今も忘れられません。
ただ課題は確実性と体力。
プロは1試合だけ良くても駄目で、常に高いパフォーマンスを発揮しなければなりません。
盛島選手は春先の体のキレを維持することができず、その後は目立った活躍をすることなくシーズンを終えました。
2024/11/24から行われたアジアウインターリーグでも23打席で打率.182,出塁率.217,長打率.182,OPS.399と奮いませんでした。
アウトになった18打席の内、三振数は13個。
完全に自分の打撃を見失ってます。
盛島選手の2024年シーズンは三軍の正捕手として活躍。
次に目指すは二軍の正捕手の座です。
安定して二軍に出られるようになれば間違いなく支配下登録は叶いますし、その後の一軍出場も見えてきます。
ただ、2025年シーズンから一軍でバリバリ活躍するイメージは湧きません。
一歩ずつステップアップしていきたいところです。
藤田悠太郎
2025年度でプロ2年目を迎える藤田悠太郎選手。
2025年6月3日で20歳になる若手選手です。
彼の持ち味は肩と選球眼。
2024年シーズンでは三軍四軍の舞台で持ち前の強肩を披露。
あえて育成ではなく支配下で指名しただけのことはあります。
打撃でも良い意味で振らないというか、状況に応じて自分のやるべきことを徹底してやっていました。
体ができてくれば楽しみな存在になります。
ただ課題は体つき。
徐々にプロの体に近づいてはいるものの、まだ他の選手に比べると体の厚みが足りません。
甲斐選手ぐらい丸太みたいな太ももを手に入れたら、打球の伸びが良くなると思いますし、自慢の強肩もさらにレベルアップするはずです。
正直、藤田選手が2年目から一軍で活躍するイメージは湧きません。
2025年度も技術面・体力面の底上げをする一年になるでしょう。
もちろん良い意味で、予想を裏切る活躍を見せてもらいたいです。
人的補償&栗原陵矢選手の捕手再転向
基本的には上記で述べた10選手の中で嶺井博希選手、谷川原健太選手、海野隆司選手、大友宗選手、渡邉陸選手、石塚綜一郎選手による正捕手争いが予想されますが、その争いに加わる可能性のある選手がいます。
それが巨人の人的補償選手と栗原陵矢選手です。
巨人の人的補償選手予想はこちらで行いました。
栗原陵矢選手の捕手再転向に関してはこちらの記事でじっくり書いてます。
あくまでも可能性の話なので参考程度に。
シーズンが開幕しても捕手が安定しないようであれば「トレード」も選択肢の1つに入ってきます。
ただ、今は在籍する選手に期待しましょう。
良いタイミングかもしれない
近年のホークスは甲斐選手がいてくれるのが当たり前だったので、捕手のことは全く考える必要がありませんでした。
首脳陣・フロントも一応次を育てておかなきゃと考えてはいたのでしょうが、実際に育てようという姿勢はあまり感じられませんでした。
寧ろ打って守れる捕手を目指してほしいはずの選手に内野や外野の練習をやらせてみたり、打力が売りの捕手を現役ドラフトに出してみたりと、これからも甲斐選手がホークスでプレーする前提で編成育成を進めていたような印象です。
今になってようやくあらゆる考えを巡らせているところでしょう。
この正捕手問題は短期的にみるとホークスにとって大きな痛手です。
ただ、よくよく考えると、これで良かったのかもしれないと思うようになりました。
なぜなら、不完全さが競争を加速させるからです。
捕手はこの選手、一塁手はこの選手、二塁手はこの選手。
このようにレギュラーがほぼほぼ決まっている状況は何も面白くありません。
結果を出せば試合に出られるとはいっても、そのレギュラー選手が活躍し続ける限りチャンスは巡ってきません。
それで年だけ重ねていつの間にか戦力外。
そのパターンが最悪です。
今回、レギュラーの枠が1枠空いたことで、その枠に入り込もうと若手選手の目の色が間違いなく変わります。
そして、それに刺激を受けてレギュラー選手も奮闘します。
それでチームが良い方向に進みます。
ホークスは普通にやれば勝てる戦力があるチーム。
2024年シーズンは投手成績,野手成績共に軒並み1位でした。
1つレギュラー選手が欠けたからといって、そこから大崩れするようなチームではありません。
捕手が少し頼りなかったとしても、それをカバーできる戦力が揃っています。
2011年オフにはチームの主要戦力である先発投手が3名も流出しました(杉内俊哉、和田毅、ホールトン3名で43勝)。
その時と比べると全然マシな方です。
現在のホークスの主力選手は28代後半から30代前半の選手が多いですが、その選手達が数年後一気に衰えたと仮定すると、そこから戦力を立て直すのは相当厳しいです。
ただ少しづつであれば、あまり戦力を落とすことなく戦えます。
今回の甲斐選手のFA移籍は長期的に強いチームを作るために必要なことだったとプラスに捉えるという視点も持っておきたいところです。
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