有原航平投手の北海道日本ハムファイターズ移籍により、ホークス先発陣は大きな転換点を迎えました。
問題は単純です。「有原の穴は誰が埋めるのか」。しかし、その答えは一人に絞れるほど単純ではありません。
本記事では、有原投手が担っていた役割を整理したうえで、その穴を埋めうる候補投手を考察していきます。
まず整理したい「有原航平の穴」とは何か
有原投手の穴とは、単なる勝ち星や防御率ではありません。
- 年間ローテーションを守る耐久力
- 大崩れしない安定感
- 中継ぎに過度な負担をかけない投球内容
つまりホークスが失ったのは「計算できる先発1枚」です。
この役割を誰が、どのような形で担えるのかがポイントになります。
具体的には有原投手が消化した年間約180イニングをどうカバーしていくかが問われます。
【本命候補】ローテの軸として期待される投手
モイネロ
先発転向2年目でパリーグMVPに輝いたモイネロ投手は間違いなく2026年度の先発ローテーションの軸です。
期待するというか、やってもらわなくては困ります。
2025年度は有原投手やモイネロ投手を始めとする強力先発陣が力を発揮したからこそ、日本ハムとのデットヒートを制すことが出来ました。
モイネロ投手が有原投手の穴を埋めるのではなく、モイネロ投手は別で考えて他の投手がさらに頑張らなくてはなりません。
ただ2026年度のモイネロ投手はWBCの出場も重なる為、ベストコンディションでシーズン開幕を迎えるのは難しいはず。2024年度は163回、2025年度は167回を消化しましたが、例年通り160回以上を消化する計算は立ちません。最低でも規定投球回(143回)には到達してほしいところではありますが。
仮に2026年度のモイネロ投手の投球回数が143回だとすると、昨年と比べて24回減となります。
上沢直之
日本球界復帰1年目で難なく規定投球回をクリアした上沢直之投手は間違いなく2026年度の先発ローテーションの軸です。モイネロ投手がWBCで出遅れることを考えると「開幕投手」の可能性もあります。
2025年度の投球回数は144.2回。本来はもう少しいけるところを樹木トリオの盤石さも相まって、6回辺りで降板する場面が多かった印象です。
日本ハム時代はまさに「エース」として、勝っている試合も負けている試合も1人で投げ抜いていました。シーズン150回以上が4回、その内160回以上が3回、その内170回以上が1回。投げる体力を持ち合わせている投手です。
上沢投手自身の目標が「180回以上」。これを達成できたなら文句なしの働きぶりです。
上沢投手に期待して2026年度は180.2回投げる計算を立てておきます。そうすると+36回となります。
大関友久
年々成績を伸ばし、2025年度は遂に規定投球回&二桁勝利をクリアした大関友久投手は間違いなく2026年度の先発ローテーションの軸です。
心技体全てにアプローチをかけ、自分に合う「型」を模索している大関投手。例えばスピードに関しては、以前は160キロを目指すために体を大きくしていたのが、現在は140キロ台前半のストレートをどう速く見せるかという意識に変わってきています。
規定投球回は確実にクリアしてくれるだろうというところで、2025年度と同じく146.2回投げると想定すればプラスマイナスゼロです。
【必要枠】スポット起用が予想される投手
東浜巨
現在FA宣言中の東浜巨投手ですが、ホークスへの残留が決まれば、有原投手の移籍に伴い出場機会が増す可能性は十二分に考えられます。
2025年度は怪我も無く、普通に投げれる状況ではあったものの、一軍では7試合登板(うち6先発)。ローテの合間を担う存在となりました。少ない登板機会でしっかり結果を残し防御率2.51と優勝に貢献したのは流石です。
2026年度もスポット起用が濃厚ではあるものの、2025年度の32.1回よりは確実に増えるでしょう。10先発で50.1回投げたと仮定すれば+18回となります。
上茶谷大河
DeNA時代に先発中継ぎ両方で実績を作った上茶谷大河投手も先発として起用される可能性は十分あります。
もちろん今のままでは勝負できません。150キロに慣れているパリーグの強打者達は、上茶谷投手の140キロ台後半の真っすぐを全く苦にしません。変化球で揺さぶりをかけても全く効果はありません。
来年ラストチャンスのつもりで大きくレベルアップし、平均150キロ台中盤の出力を手に入れたなら非常に面白い存在になります。因みに計算はできません。
大山凌
2025年度前半は主に中ロングとしてチームに貢献した大山凌投手も先発起用の可能性があります。
大山投手はプロ1年目に二軍で先発として起用されており、その時はストレートフォークだけでなく様々な球種を用いて打者を抑えていました。一軍で中継ぎ起用されるようになってから、徐々に使う球種を減らしていった印象です。
制球面に多少の不安があり、四球で崩れず場面も度々あるのでそこさえ改善できればというところです。2025年後半はフォームのバランスを崩し二軍でも奮いませんでした。計算はできません。
【復活枠】本来の力を出せば大きな戦力になる投手
スチュワート
2023年、2024年と着実にステップアップし大きな契約を勝ち取ったところで、怪我によって1年間投げれなかったスチュワート投手も計算に入れたいところ。
スチュワート投手の制球力が課題なことは誰もが知るところ。ただ、そこを差し引いても余りある球威があります。
2024年度に記録した120回まではいかなくとも、100回投げてくれれば+100回となります。
大津亮介
プロ2年目までは中継ぎ、先発で一年間結果を残したものの、2025年度は苦しんだ大津亮介投手はそろそろチームの中心になっておきたいところ。
2025年度は「フォーク」の改良に取り組み、後半戦からは前半戦の時と見違えるような活躍を見せました。この活躍を1年間できれば、自ずと「エース」への道が開けてくるはずです。
2025年度の投球回数が65.2回。2026年度は規定投球回をクリアする143.2回に期待です。そうすれば、+78回となります。
【成長枠】ブレイクすれば最大の“穴埋め役”になり得る投手
徐若熙
台湾の至宝、徐若熙投手は本来はローテの軸として期待したいところですが、日本でまだ1試合も投げていないということでこの成長枠に入れてます。
徐投手は当然WBCの台湾代表に選出されるのでモイネロ投手同様に調整が遅れる可能性があります。トミージョン手術を受けた経験があり、台湾での起用法同様に、慎重に慎重を重ねて起用される可能性があります。
期待値としては規定投球回到達。ただ、WBCもあるということで、80~100回投げてくれたらという計算です。そうすれば+80~100回となります。
松本晴
2025年度に半分中継ぎ半分先発のシーズンを過ごした松本晴投手は先発一本でブレイクを目指すシーズンに挑みます。
元々ストレートのキレで勝負していたのが2年目の怪我後からスピードが大幅アップして、先発中継ぎどちらでも使いたくなるような投手に成長しました。松本晴投手本人だけでなく首脳陣も近未来のエースとして期待していることでしょう。
2025年度の投球回数が91.1回だったので、少なくとも120回はクリアしてもらいたいところ。仮に120.1回投げたとすると、+29回となります。
前田悠伍
将来的にホークスを担う存在になるであろう前田悠伍投手はそろそろ一軍に出る頃です。
入団時から二軍では敵無しで、そこから課題の球速UPに取り組み、2年かけて一軍で勝負できるところまで来ました。これでまだまだ伸びしろがあります。第一に制球力が抜群なので、四球で崩れる心配が全くありません。
2025年度の一軍投球回数が11.1回。ここから一気に規定投球回に到達しても私は驚きません。143.1回投げたと仮定すれば+132回となります。
前田純
2025年度前半戦は渡邉陸選手とのコンビで試合を作った前田純投手にも覚醒の可能性があります。
前田純投手は140キロに満たない速さのストレートにもかかわらず、高めのコースで空振りが取れる珍しい投手。球速が速いに越したことはありませんが、前田純投手には前田純投手にしかない良さがあります。四球も意外と出す投手なので、評価が分かれるところですが個人的には面白いと思います。
前田純投手のホップ成分の高いストレートを、他球団にある程度把握された中で2026年度に臨むので計算は正直立てれません。一軍実質2年目のシーズンで2年目のジンクスに打ち勝てるかに注目です。
尾形崇斗
150キロ台中盤から後半のストレートを持つ剛腕リリーバーがまさかの先発挑戦。尾形崇斗投手がどのような活躍を見せるのでしょうか。
尾形投手はスピード至上主義のホークスにおいて、個性を作るために肉体改造に取り組み年々平均球速を伸ばしていきました。今やチームトップクラスの剛腕です。ストレートの強さだけで言えばNo.1ではないでしょうか。
逆にこれだけのストレートを持っていながらなぜ勝ちパターンにも入ることが出来ていないかというと、「変化球の精度が悪いから」です。決め球のスライダーは良いところに投げ切ったとしても打者に見送られます。それでカウントを悪くして四球連発です。その変化球を1から見直すために先発挑戦という決断に至ったのではないかと考察します。先発はストレートだけだと絶対無理です。尾形投手が今オフ千賀投手のお化けフォークのような、石川柊太投手のパワーカーブのような、とにかく絶対的な球種を身につけた時、一軍でも無双できるでしょう。0か100のイメージです。計算はできません。
【現実的結論】有原の穴は「一人」では埋まらない
結論として、有原航平投手の穴を完全に埋める投手は、現時点では存在しません。
ホークスが取るべき現実的な道は、
- 複数先発による役割分担
- 若手の台頭による底上げ
- 中継ぎを酷使しない運用
この総合力での穴埋めです。
有原投手という“絶対的な1枚”が抜けたからこそ、ホークスはより組織的な投手運用を求められることになります。
具体名を挙げるなら徐若熙投手、スチュワート投手、大津亮介投手、前田悠伍投手の4投手がどれだけ多くのイニングを稼げるかが鍵になるでしょうね。
おわりに
有原航平投手の移籍は、ホークスにとって痛手であることは間違いありません。
しかし同時に、「次の先発の主役は誰か」を見極める重要なシーズンにもなります。
誰か一人が名乗りを上げるのか、それとも複数人で支え合うのか。
有原投手の穴を巡る戦いは、既に始まっています。



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