2025年度の現役ドラフトは、例年以上に活発な動きが目立つ一年となりました。各球団が明確な補強ポイントを持って動いたことで、IN・OUTの流れを見るだけでも編成方針が浮き彫りになります。本記事では、その動きを球団別に整理しながら、今回の現役ドラフトが各チームにもたらす意味を丁寧に解説していきます。
福岡ソフトバンクホークス
IN: 中村稔弥投手
OUT: 佐藤直樹外野手
感想:
ホークスは厚みのある外野手の中から佐藤選手を放出し、手薄な左の中継ぎ候補である中村投手を獲得。理想に近い現役ドラフトとなった。佐藤選手の2025年度はキャリアハイとなる102試合に出場し、スタメン代走守備固め全てをこなしチームの優勝に貢献した。打撃では212打席でOPS.700を記録。ホークスでレギュラーを獲るのはこれでも厳しいが、他のチームなら十二分にチャンスはある。
オリックスバファローズ
IN: 平沼翔太内野手
OUT: 茶野篤政外野手
感想:
年々一軍での出場機会を減らしていた茶野選手を放出し、ユーティリティー内野手の平沼選手を獲得。杉本裕太郎選手、西川龍馬選手、中川圭太選手でレギュラーが固まっている外野陣に比べて、内野はまだまだ隙がある。太田椋選手、紅林弘太郎選手という若い二遊間に刺激を入れる為にも平沼選手の加入は大きい。
北海道日本ハムファイターズ
IN:菊地大稀投手
OUT: 松浦慶斗投手
感想:
ホークスとファイターズの戦力はほぼほぼ変わらない。唯一変わるとすれば、救援陣の安定感。そのような意味で菊地投手の加入は大きい。奪三振率が高く、無双できるタイプの投手。彼が8回9回に収まるようになれば、安定した戦いができるようになる。
埼玉西武ライオンズ
IN: 茶野篤政外野手
OUT: 平沼翔太内野手
感想:
良い投手が多く、その投手を出せば指名順位を高めることが出来たと思うが、それよりも戦力を落とさないことを重視した印象。12球団ワーストOPSのチームが野手を放出するということが、まさにそれを物語っている。西武の外野手は渡部聖弥選手や西川愛也選手等若い選手の台頭が目立つものの、まだ入り込める余地はある。茶野選手にとってはオリックスにいる時よりもチャンスが増える。
東北楽天ゴールデンイーグルス
IN: 佐藤直樹外野手
OUT: 辰見鴻之介内野手
感想:
激アツな補強に成功。楽天は外野手に明確なウィークポイントがあるチーム。中島大輔選手がブレイクを果たしたものの、その中島選手であっても他のチームに行けばレギュラー当確とは言えない成績。辰己選手がFA宣言中で不安定なチーム状況の中、2025年度に102試合に出場しホークスの優勝に貢献した佐藤選手が加わるとなると非常に大きい。
千葉ロッテマリーンズ
IN: 井上広大外野手
OUT: 中村稔弥投手
感想:
ロッテは活きの良い若手が多数在籍。2025年度の最後の方は消化試合で若手しか出ていなかったぐらい。荻野選手や角中選手に頼るというよりも、これから3~5年かけて常勝軍団を築いていこうという時期。そんな時期に伸び悩む大砲候補、井上選手を獲得できたのは非常に大きい。活きの良い若手はたくさんいるものの、圧倒的レギュラーという選手はいない状況。井上選手にとってはチャンス。
読売ジャイアンツ
IN: 松浦慶斗投手
OUT: 菊地大稀投手
感想:
正直に言うと、「もったいない」。巨人の右の中継ぎは確かに豊富ではあるものの、菊地投手を超える素材は果たしているのかというぐらい高いポテンシャルを持った投手。加入する選手が誰であれ、もったいないという印象になる。松浦投手の加入は先発ローテを争う存在として注目が集まる。2025年度の巨人の先発ローテは山﨑伊織投手と赤星優志投手以外は定まらなかった。2026年度はそこからさらにグリフィン投手が退団することにより、チャンスはかなりある。
阪神タイガース
IN: 濱田太貴外野手
OUT: 井上広大外野手
感想:
パンチ力のある外野手を手放し、新たにパンチ力のある外野手を加えたという印象。ただ、実績に関しては雲泥の差。濱田選手は一軍でレギュラーを掴みかけたシーズンもあり、通算本塁打は18本。井上選手と年齢は1歳しか変わらず、長距離砲として同様の期待が集まる。期待値からすれば井上選手以上かもしれない。
横浜DeNAベイスターズ
IN: 濱将乃介外野手
OUT: 知野直人内野手
感想:
桑原将志選手がFAで西武へ移籍したことで、濱将乃介外野手を獲得。ただ、本来の狙いは「投手」だったように感じる。ケイ投手、ウィック投手、バウアー投手が退団、ジャクソン投手も不透明。計算の立つ投手が続々といなくなったことで、外国人補強も含めて動き出すのは間違いない。知野選手というパンチ力のある内野手を提出したことで、指名順位を上げた結果がこれならば、残念と言わざるを得ない。野手に関しては怪我がちのオースティン選手を自由契約にするほど余裕があるのがDeNAという球団。
広島東洋カープ
IN: 辰見鴻之介内野手
OUT: 大道温貴投手
感想:
2023年度はブルペンの中心として働いた大道投手を放出して、足が武器の辰見内野手を獲得。特に戦力的に痛みがあるわけではなく、それで足を使える選手を獲得できたので広島としては非常に大きい。現在のカープに本塁打を30~40発打つ選手はいない。そうなると、足を絡めながら点を取る野球も当然求められる。辰見選手のような俊足選手が活きる戦術で戦えば、優勝を目指せるかもしれない。
中日ドラゴンズ
IN: 知野直人内野手
OUT: 濱将乃介外野手
感想:
中日は内野手に隙がある球団。外野は岡林勇希選手、細川成也選手、上林誠知選手とジャパンでも主力を張れるような選手が揃っている。濱外野手を放出して、知野内野手を補強することは非常に理にかなっている。大大大補強と言ってもいい。中日の二遊間野手は足の速いタイプはたくさんいるものの、知野選手のようなパンチ力のあるタイプはいない。彼が下位打線で振り回して、打率1割台でも二桁本塁打を放つような活躍を見せると、相手球団からすれば非常に厄介となる。
東京ヤクルトスワローズ
IN: 大道温貴投手
OUT: 濱田太貴外野手
感想:
ヤクルトといえば「投手」。2025年オフは村上宗隆選手が抜けることで野手の補強も急務ではあるものの、やはり優先すべきは投手。期待の濱田選手を放出してまで獲得した大道投手には期待が集まる。前年度の現役ドラフトで広島から矢崎拓也投手を獲得して、その矢崎投手がいきなり活躍したことから味をしめたのは間違いない。
総括
2025年度の現役ドラフトは全体的に補強ポイントを埋めることが出来た有意義なものだったと認識しています。各球団がポジションの渋滞を解消しつつ、即効性のある戦力を求めて動いたことで、例年以上に補強意図が分かりやすいドラフトになったといえます。
そもそも現役ドラフトは「出場機会の最適化」が目的。
移籍しても選手にとってプラスにならないなら意味がありません。頑張るのは選手達ですが、その選手が一番輝ける場所を作るために来年以降も続けてほしいと思います。
最後に現役ドラフトあるあるを1つ。
- 選手層の厚い「球団」程、現役ドラフトのメリットは少ない。
- 選手層の厚い球団に所属している「選手」はどんどん現役ドラフトをやってほしい。



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