10月。勝負の世界に「情け」はなく、ホークスの選手たちもまた、球団から突きつけられる現実と向き合う時を迎えています。
先日、又吉克樹投手と武田翔太投手の構想外が発表。これにより現在のホークスの支配下枠は67。それでもドラフトで5名、育成→支配下で5名と考えると支配下枠はまだ開けておかなければなりません。また、モイネロ投手が2026年度から日本人枠になることで、新たに外国人選手を連れてくる可能性も十分考えられます。
ということで今回は心苦しいですが、ホークス支配下選手の中から10名の構想外候補を挙げていきます。(又吉投手と武田投手は除きます)
牧原巧汰(捕手・23歳)
4月から構想外考察をスタートし今回が7回目ですが、その全てで名前が挙がっているのが牧原巧汰選手。
今季は二軍戦108打席に立ち、打率.124,本塁打0,OPS.357。「打てる捕手」として期待されていながら、その実力を十分に発揮することが出来ませんでした。三軍でプレーしていた時期が長かったことで二軍投手の球に慣れていない部分も当然あるとは思います。ただ高卒1年目の石見選手や宇野選手がいきなり二軍投手に適応しているのを見ると、高卒5年目の牧原選手は言い訳ができません。
ホークスの23歳以上の支配下選手の中で、未だお試しの一軍にすら呼ばれていないのは牧原巧汰選手だけ。今オフは育成契約を勝ち取るか、それとも何もなく自由契約になるかの二択になるだろうと推測されます。
村田賢一(投手・24歳)
「決め球」シンカーを武器に打たせて取る投球を繰り広げる技巧派右腕の村田投手ですが、現代野球は球速至上主義。変則左サイドの大江投手や長谷川投手を除き、投手は150キロという数字が一軍昇格への一つの目安となります。もしくは二軍で防御率0点台or1点台の圧倒的な投球をするかです。
ホークスの二軍でただ1人、100イニング以上(108.2)を投げ防御率2点台(2.48)の板東投手も本来のストレートが戻ってきていないという理由で2年続けて一軍昇格が叶いませんでした。
板東投手で無理なら、同じくストレートの球速帯が140キロ前後で二軍防御率4.03の村田投手が一軍に上がるのは厳しいです。
大卒で入団し2年しか経っていないと考えると、まだ我慢してもらえる立場のようにも思えますが、高卒で入団したと仮定すると6年目。大卒社会人卒の選手は1年目から勝負です。特に支配下指名なら尚更です。
一軍に上がらない投手を支配下で置いておく必要は無いので、来季は育成契約もしくはリリースという形になるのではないでしょうか。
長谷川威展(投手・26歳)
フロントとしてはどうにかこうにかして支配下枠を空けたいはず。
トミージョン手術明けの長谷川投手は、今季中の復帰が絶望的な状況。昨季の澤柳亮太郎投手と同様です。戦力としては見ているものの、一旦育成契約にする選択肢は十分考えられます。もちろん長谷川投手の回復次第では、そのまま支配下選手として契約し続けるでしょう。
同じくトミージョン手術を受けた宇野真仁朗選手も、一時的に育成選手として再契約する可能性はゼロではありません。ただ彼の場合は高卒1年目の今季から同期の石見選手と共に二軍で頭角を現したトッププロスペクト(打率.391、OPS.819)。競技復帰したらすぐに二軍で起用し続けたいので、三軍二軍で結果を残し続けなくてもすぐに支配下登録されます。そうなると、育成選手にとってはモチベーションの低下に繋がります。また、育成再契約の為に一旦自由契約にするということは他球団と交渉できるようになるということ。確実に移籍します。つまり、宇野選手をシーズンオフに育成にするのは悪手です。競技復帰予定は4月の頭なので、それまでにフィジカルをさらに高めてもらいましょう。
田浦文丸(投手・26歳)
2023年には45試合に一軍登板しホークスの勝利に貢献した田浦投手も構想外の候補には入ってきます。
近年は度重なる怪我に苦しんでおり、ベストパフォーマンスを出せていません。2025年度は二軍のみの登板で19試合で防御率4.58。特に終盤戦での大量失点が響きました。
彼の持ち味である魔球チェンジアップは強いストレートがあってこそ生きる球。ストレートが走っていないと、簡単に見逃されカウントを悪くして痛打を喰らいます。ストレートが走っていないことで余計にコースを意識して四球、逆により強い球を投げようとして制球がアバウトになりど真ん中。このような悪循環が見受けられます。
ただストレートの強さが戻ればまだまだやれるはず。仮にリリースされたとしても彼を欲しがる球団は現れるのではないでしょうか。またホークスも今季大江投手が加入したとはいえ、依然として左の中継ぎは手薄な状況。残留の道もわずかながら残されています。
板東湧梧(投手・29歳)
二軍で結果を残していながら一軍に上がれないものの、それでもへこたれず結果を残し続けていたのが板東投手。ただそんな彼も構想外候補の1人です。
一軍での登板は2年連続でゼロ(2024年、2025年)。一昨年までの立ち位置を取り戻せていません。板東投手に求められるのは“出力UP”。これだけです。投球内容は良し悪しがありますが、根本的な部分が理由で一軍に上がれていません。
板東投手が今のスピードでできる最大限の投球を心掛けているのに対し、球団が求めているのは以前のように150キロ前後のストレートと落差の大きなフォークで三振を奪う姿。こう考えると、板東投手はこのままホークスにいるよりも他球団へ移籍した方が幸せなのかもしれません。
現阪神の大竹耕太郎投手も、ホークス時代は出力の低さから一軍に上がれない時期を過ごしました。板東投手は大竹投手のようにこの2年間の悔しさをバネにして他球団でも頑張って欲しいなと思います。一軍に一切上げないのに、リリースすらしなかったらホークス球団はただの鬼です。
廣瀨隆太(内野手・24歳)
廣瀨選手は9/20の二軍戦でようやく今季第一号本塁打を放ちました(今季一軍での第一号は4/12)。9月に入ってからの彼が本来の姿だと思います。それにしてもスランプが長すぎます。
一軍では山川選手が一年を通して調子が上がらない最悪のシーズンを送りましたが、そんな山川選手でも20本以上の本塁打を放っています。二軍戦で401打席も立って、たったの本塁打1本というのはホームランバッターとは言い難い成績です。
守備は間違いなく向上しました。バントもうまくなりました。ただ廣瀨選手に求めているのはそこではありません。そんな選手をドラフト3位で獲りません。廣瀨選手に求められているのは長打力。浅村選手や牧選手のような「長打力があるセカンド」として期待されて入団しました。
守備がうまくて、小技ができるセカンドならたくさんいます。よってこのままだと巨大戦力に埋もれます。もし彼が来季もホークスでプレーすることになれば、より長打力を意識してほしいなと思います。
秋広優人(内野手・23歳)
年齢は23歳とまだまだ若く、トレードで入団して1年目に一軍で3日連続でお立ち台に上がるなど印象深い活躍をした秋広選手ですが構想外の可能性が無いわけではありません。これまでの構想外考察で一度も名前を挙げていなかったので今回名前を出しておきます。
「未来の主砲」と呼ばれるのは二軍で圧倒的な成績を残してこそ。今季の秋広選手は二軍降格後、最後の方はスタメンから外される試合も多くなるぐらい結果を残せませんでした。ポジションは一塁か外野の両翼(右翼か左翼)なので、本来は石塚綜一郎選手や山本恵大選手のような圧倒的な数字を期待したいところでした。
アベレージヒッターなら無理に打球を上げる必要な無いんです。ただその場合、打率&出塁率には拘らなければなりません。二軍で出塁率は.376とまずまずの数字を残していますが、打率.238は物足りないです。
モイネロ投手の日本人枠化に伴い、外部から日本ハムのレイエス選手のようなとにかく打てる外国人選手を獲得するとなった場合、真っ先に弾かれるのは秋広選手のような気がします。守備力もそこまで高い方では無いですし。
川村友斗(外野手・26歳)
昨季2024年度は主に代走守備固めを中心に自己最多の88試合に一軍出場し、打撃でもパンチ力を見せつけた川村選手は本来構想外なんてありえません。ただ、ホークスの選手層の厚さを考えるとそれもあり得ます。
川村選手は守備範囲の広さと肩の強さから、外野手の中でも「センター」を守れる貴重な選手。今季さらなる成長を遂げた周東佑京選手の後釜として注目されていました。ただ、現在周東選手の後釜枠には川村選手と1歳しか変わらない佐藤直樹選手と緒方理貢選手が収まっています。佐藤選手は長打があるタイプで、緒方選手は足を最大限活かした打撃スタイル。それぞれの個性を活かしながら、守備走塁は完璧にこなします。
さらに下の代には成長株の笹川吉康選手。二軍ではあるものの、年々成績を伸ばしています。
両翼(右翼or左翼)も考えると幅は広がりますが、その場合はより打力が求められます。近藤選手、柳町選手、柳田選手、正木選手、石塚選手、山本選手、大泉選手…。彼らと相対して勝たなければなりません。
諸々を考えると川村選手は他球団に移籍した方が幸せな気がします。もちろんホークスの強力外野陣の中に割って入るだけのポテンシャルはありますが、確実にレギュラーを掴むなら移籍が一番です。個人的には構想外というより現役ドラフトのイメージです。
安德駿(投手・23歳)
安德投手のプロ1年目はコンディション不良から始まりました。そして実戦復帰後、徐々に球速が上がってきて148キロまでスピードを取り戻したところで再び実戦の舞台から姿を消しました。詳細は分かりません。
投げた試合で特別大きなアピールをしているわけでもなく、このような戦線離脱を繰り返しているのを見ると、プロ1年目ではありますが育成再契約も致し方ないのかなと思います。同じく大卒1年目の岩崎峻典投手は結果こそ伴っていませんが、試合で投げているのでそこが安德投手とは違います。
支配下枠争いはどこの球団も熾烈です。怪我無く投げることが最低条件で、結果も求められます。ホークスはその中でも特に熾烈なのでプロ1年目であっても容赦はしません。そう考えると岩崎投手も危ないです。
上茶谷大河(投手・29歳)
先発中継ぎ中ロング、どこでもこなせて使い勝手が良い。どんどんストライクゾーンで勝負し、投球テンポが早い。ムードメーカーとしても存在感を発揮。上茶谷投手は居てくれたら非常にありがたい存在ではあります。
ただ、プロ野球は結果が全て。今季の一軍での防御率は7登板で6.57。これで来季も生き残るのは現実的に考えて厳しいです。来季で30歳なので、本来はチームの中心になっておかなければなりません。それで言うと同じくDeNAからやってきた濵口遥大投手(30)も怪しいです。怪我や病気の影響で出力が未だ戻っておらず、二軍でも安定した投球を披露できていません。これまで残してきた実績と「左投手」という希少性が残留の決め手となるでしょうか。
木村光投手や大山凌投手が便利屋としての役割を担えると判断すれば、実績のある投手達ですがリリースも十分考えられます。その大山投手は二軍でもピリッとしない投球が続いているんですけどね。
最後に
構想外は戦力外とは違います。戦力外は戦力ではないから戦力外。構想外は来季の構想から外れているから構想外。似ているようで意味合いが全然違います。ただ、その意味を同じように受け取る方もたまにいらっしゃいますよね。
NPB球団は70という支配下枠を上手に使わなければなりません。極論を言えば、良い外野手が70人いても良いチームとは言えないんです。投手、捕手、内野手、外野手。全ての戦力をバランス良く整え、年齢のバランスもとらなければなりません。2010年頃の中日ドラゴンズの主力はほとんどが35歳以上のベテランでした。その結果、世代交代を図れず、長い暗黒時代を迎えることとなります。
ホークスは常勝が義務付けられているチーム。「育てながら勝つ」ことをしなければ、リーグ10連覇は不可能です。時には苦しい決断もあるでしょう。戦力ではあるものの、チームのトータルバランスを見て手放すことも当然あります。寧ろそればっかりです。ホークスを構想外となった後に他球団で活躍している選手を見ると改めてホークスの層の厚さを実感します。
ホークスは「戦力外」より「構想外」の方が多い。これだけ覚えてください。
先月9月の考察はこちら。
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