「長打を打てる二塁手」という存在は、野球界において常に特別な価値を持ち続けてきました。かつてメジャーリーグ(MLB)ではロベルト・アロマー選手やジェフ・ケント選手、日本プロ野球(NPB)では井口資仁選手、浅村栄斗選手、山田哲人選手といった選手たちが、強打と堅守を兼ね備えた名二塁手としてファンを魅了してきました。また、現在のNPB最強セカンドと言えばDeNAの牧秀悟選手になるでしょう。守備の要でありながら、打線でも軸になれる──そんな選手は非常に貴重であり、チームの浮沈を左右するほどの存在感を持ちます。
そんな中で今回の主役は廣瀨隆太選手。慶應義塾大学から2023年ドラフト3位でホークスに入団した彼は、華麗な経歴で注目を集めながらも、即戦力としてのプレッシャーとプロの壁に直面しながら、少しずつ着実にその歩みを進めてきました。
本記事では、「廣瀨隆太はNPBを代表する強打のセカンドになれるのか?」というテーマのもと、彼のこれまでの歩み、現在の実力、そして未来への可能性について、徹底的に分析・考察していきます。
エリート街道を歩んだ経歴
廣瀨隆太選手は、東京都東久留米市出身。慶應義塾幼稚舎から慶應義塾大学まで16年間慶應に通い続けた生粋の慶應ボーイです。高校通算41本塁打、大学通算20本塁打と長打力に関してはアマチュア時代から光り輝いていました。特に大学通算20本塁打というのは東京六大学野球で歴代4位にランクインする数字です。
大学3年4年時には2年続けて大学日本代表に選ばれ、そこでも結果を残しプロスカウトからの評価が急上昇。2023年のドラフトで福岡ソフトバンクホークスから3位指名を受け、晴れてプロ入りを果たしました。
期待と現在のギャップ
廣瀨選手は入団直後から「長打を打てる二塁手」としての期待がかなり大きかったです。ドラフト指名直後に出したこちらの記事をご覧ください。
1年目から一軍で20本塁打。即戦力として入団しただけに、過去の実績も踏まえ、これぐらいの成績は期待したいところでした。
ところが1年目(2024年度)の打撃成績はこうなりました。

5月の終わりに一軍昇格し、プロ初打席から17打席目で待望のプロ初ヒット、そして6/14にはプロ初本塁打。一定の結果を残せたとは思います。ただ、期待していた数字とは大きくかけ離れており、即戦力としての働きは果たせませんでした。
特に長打率の部分。
打率出塁率はこれぐらいでもいいですが、パワーヒッターを名乗るにはせめて長打率.400以上は欲しいところです。
そして2年目(2025年度)の2025/7/14時点での打撃成績はこちら。

全体的に1年目よりも数字が落ちています。
突出した打撃成績を残せないことで、より小技(犠打や右打ち)や守備のユーティリティー性(三塁や一塁)を求められるようになり、余計に数字を残せていません。
これがまさしくプロの壁です。
なぜ本塁打が出ない???
アマチュア時代は本塁打を量産していた廣瀨選手が、なぜプロの舞台でここまで本塁打を打てなくなったのか。さらには長打すら出なくなったのか。それには間違いなく理由があります。
その理由を考えていきます。
(ここからは私の持論)
廣瀨選手は大学時代、トップでバットが立っていました。ただプロ入り後はトップでバットが寝ています。ここにヒントが隠されているように感じます。プロの投手はアマチュアの投手と比べて当然球のスピードが速い。それに対応する為にはバットを最短距離で出さなければならない。そこでバットを寝かせて振り始めるという結論に行きついたのではないでしょうか。
ただ、それによって打撃に必要な「間」が取れなくなってしまい、力が十分伝わらず、バットに当たってもヒットにしかならないという状態が今です。窮屈なスイングだと感じます。
元ホークスの熱男こと松田宣浩選手は、バットを立てた打撃フォームから寝かせる打撃フォームに変えて覚醒した選手。廣瀨選手も松田選手のようになるのがベストでしたが、まだこの打撃フォームを完全に自分の体に落とし込むことができていません。
ここから廣瀨選手がプロ仕様のバッティングフォームを習得するのか、それとも大学時代打ちまくっていた元々の打撃フォームに戻すのか。この選択は廣瀨選手の今後の野球人生を左右します。
個人的には大学時代の打撃フォームに戻すべきだと思います。
理由はシンプル、約2年間結果が出なかったからです。
ライバルとの争いを制すためには…
廣瀨選手は守備走塁に特化した選手ではありません。
その為、「打撃面」にかかる期待は当然大きくなります。
セカンドの候補は、牧原大成選手、野村勇選手、川瀬晃選手、ダウンズ選手、庄子雄大選手、イヒネイツア選手、石見颯真選手、宇野真仁朗選手、西尾歩真選手、勝連大稀選手、川原田純平選手、山下恭吾選手、中澤恒貴選手、広瀬結煌選手、アルモンテ選手と本当にたくさんいます。
この中でいかに長打力を示すことができるかが勝負です。
廣瀨隆太に託される“未来”──ホークスの希望として
廣瀨選手は現時点ではまだ「完成された選手」とは言えません。しかし、打撃における潜在能力、そして知性とメンタリティのバランスを見たとき、彼が将来的にNPBを代表するセカンドへと成長する可能性は決して夢物語ではありません。
数年後、「あの時、廣瀨隆太を信じてよかった」とホークスファンが思える日が来ることを願ってやみません。彼の成長は、ホークスの未来そのものです。
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