2025年シーズンもいよいよ後半戦に突入し、各球団の補強の動きが活発になってきました。福岡ソフトバンクホークスにおいても、7月下旬の時点で支配下登録枠は残り「1枠」となっており、その使い道に注目が集まっています。(支配下登録期限は7月末)
今回は、ホークスの現状を踏まえながら、残り1枠をどのように使うべきかを考察していきたいと思います。
現状の支配下枠と補強の動き
2025年シーズン開幕時点でホークスの支配下登録人数は65人。シーズン中にも数名の育成選手が支配下登録され(山本恵大、川口冬弥、宮﨑颯)、トレードも行い(リチャード→秋広優人&大江竜聖)7月下旬現在で支配下選手は69人となりました。NPBの規定では支配下選手は最大70人まで登録可能なため、あと1枠しか残されていません。
ホークスは例年、シーズン途中に支配下昇格やトレードでの補強を積極的に行う球団です。では、残された1枠は誰に、あるいはどのような戦略で使うべきなのでしょうか?
育成選手
まず考えられるのは育成選手の支配下昇格。51名の将来有望な若鷹が虎視眈々とその1枠を狙っています。
日本人
育成選手の中でも日本人選手はチャンスです。なぜなら外国人枠を考える必要が無いからです。現在はオスナ投手やスチュワート投手が戦線離脱している影響で育成外国人選手にもチャンスがありますが、来季以降新たに外国人選手を増やすことを見据えると、総合的に判断して育成日本人選手を支配下昇格させた方が都合が良いです。
そんな育成日本人選手の中で今季中の支配下昇格候補に挙がるのが西尾歩真選手と宮里優吾投手。
西尾歩真
西尾歩真選手は2022年ドラフト育成13巡目で指名されたプロ3年目。育成選手として一区切りのシーズンとなります。もし7月中に支配下登録されなければ、オフは一旦自由契約となり、ホークスと再契約するか他球団への移籍をするかの2択となります。さすがに現役引退は考えられません。
今季の二軍成績がこちら(2025/7/26時点)
打席数82,打率.300,本塁打0,打点5,盗塁0,出塁率.367,長打率.371,OPS.739
西尾選手は167㎝とプロの中ではかなりの小柄。小柄な選手にありがちなのが、守備走塁に特化して打撃ではコツコツ当てにいくようなタイプ。ただ、西尾選手は一味違います。
まず守備に関しては、内野全てを器用に守ります。送球も安定してます。特に魅力的に映るのがサードとセカンド。西尾選手の華麗な身のこなしを活かせるポジションです。
続いて打撃は西尾選手のストロングポイント。コツコツ当てるようなスイングではなく、西尾選手の場合は満振りです。その結果、ヒットコースに飛ぶ打球、さらには外野の間を抜ける打球が非常に多くなります。
最後に走塁。成績にも表れている通り、西尾選手は積極的に盗塁を仕掛けるタイプではありません。ただ、極端に足が遅いというわけでもないです。先ほども述べた通り、外野の間を抜けて二塁打や三塁打になることが多いので、盗塁をする場面が少ないというのも一因としてあります。
宮里優吾
宮里優吾投手は2023年ドラフト育成2巡目で指名されたプロ2年目の右腕。育成選手としては区切りの3年目までもう1年あります。
今季の二軍成績がこちら(2025/7/26時点)
登板数15,防御率0.56,投球回数16,被打率.207,奪三振率9.00,与四死球率3.38,WHIP1.06
宮里投手は1年目から三軍四軍では圧倒的な投球を見せており、今季の成績には何の驚きもありませんでした。彼の武器は強いストレートと落差の大きなフォークボール。THE中継ぎという投球スタイルです。
今のままでも十分一軍で勝負できると思いますが、同じタイプで一軍の舞台で無双している杉山一樹投手や藤井皓哉投手と比べるとまだ足りない部分があります。その部分を今回はあえて挙げます。
まず杉山投手と大きく違うのは出力の高さ。杉山投手はストレートの平均球速が約155キロですが宮里投手は約150キロ。5キロも違います。
続いて藤井投手と大きく違うのは変化球の精度。藤井投手の場合は決め球のフォークが浮いてしまうことがほとんどありませんが、宮里投手の場合は甘く入って痛打を喰らうことがよくあります。また、ストレート&フォークを打者が意識している中でスライダーで簡単にカウントを取るのが藤井投手でスライダーがなかなか決まらないのが宮里投手です。
逆に言えばこれらの課題を克服すれば、宮里投手は「球界を代表するリリーバー」への仲間入りを果たします。
外国人
育成選手の中でも日本人選手の方がチャンスがあるとは述べましたが、外国人選手に全くチャンスが無いというわけでもありません。2026年度からモイネロ投手が日本人枠になるからです。今季はオスナ投手とスチュワート投手が戦線離脱していて、来季はモイネロ投手の1枠が空く。外国人選手にとっては今が大大大チャンスなんです。もちろん外部から外国人選手を獲得する場合もあるので、一概に喜べるというわけでもありませんが。
そんな育成外国人選手の中で今季中の支配下昇格候補に挙がるのがアルメンタ投手。
アルメンタ
アレクサンダー・アルメンタ投手は名前を何度も言いたくなるくらい、名前がカッコいい左腕。2021年オフにホークスに入団し今年が4年目の21歳です。
今季の二軍成績がこちら(2025/7/26時点)
登板数7,防御率5.19,投球回数17.1,被打率.277,奪三振率8.83,与四死球率6.75,WHIP1.73
正直なところ課題はたくさんあります。まずコントロールが不安定な部分があり、変化球でカウントを取れている時は良いですが、そうでない時はストレートを狙い打ちされます。また、フィールディングを苦手としており、投手前の打球を処理する際は非常に危なっかしいです。
それらの課題があったとしても使いたくなるポテンシャルの高さが彼にはあります。年々スピードは向上しており、ストレートの球速は常時150キロオーバー&最速155キロ。打者に圧を与えるストレートです。そして、まだこれが成長段階というのが末恐ろしい部分。いつの日かメジャーリーグの舞台に羽ばたいていくでしょう。
トレード
今季はシーズン途中に「リチャード→秋広優人&大江竜聖」の2対1トレードを行いましたが、同様のトレードをもう一度行えば支配下枠は埋まります。
ただ、現実的に考えて2対1トレードは非常に難しいです。ホークスが1名、相手球団が2名で釣り合っていると両球団が認識できなければ成立しないのですから。
現状、ホークスは投手野手共に、ここが足りないというポジションが明確にあるわけではありません。二軍でくすぶっている選手は何名かいますが、その選手を放出するにしても2対1でトレードを行うのはハードルが高いです。
よって、今季中に2対1トレードで支配下枠を埋める可能性は低いと私は判断します。
NPB外からの補強
昨年2024年度7月末にジーターダウンズ選手、一昨年2023年度7月末にダーウィンゾンヘルナンデス投手を獲得しましたが、同様に今季もNPB外から選手を獲得する可能性はあります。NPB外という言い方で含みを持たせていますが、ほぼほぼ外国人選手です。
先程も述べたように、今季から来季にかけてのホークスは外国人枠に空きがある状況。育成からの昇格を含めていろいろと考える必要があります。
そんな中で、この7月末の時期に新外国人選手を獲得するのには明確な意図が3つあります。
それがこちら。
- 外国人枠を埋める為
- 環境に慣れてもらう為
- 短期で契約解除が可能な為
詳しく説明します。
外国人枠を埋める為
まず一つ目というか、当然のことですが外国人枠を埋めるために新外国人選手を獲得します。
ホークスのモイネロ投手、ファイターズのレイエス選手、タイガースのデュプランティエ投手、ジャイアンツのマルティネス投手、ベイスターズのウィック投手…。
外国人選手が近年不発傾向にあるとは言われているものの、全くそんなことはありません。
オスナ投手とスチュワート投手のコンディション不良で枠が空いているのであれば、有効に使おうとするのが自然な流れです。
環境に慣れてもらう為
この2つ目の理由が大きいと私は感じています。海外でプレーしていた選手が日本でプレーすることになった場合、様々な文化の違いに戸惑います。(言葉、コミュニケーション、野球とbaseball)
それらに適応する時間が間違いなく必要です。
8月に入団してから日本シリーズが終了する11月の頭までの約3ヶ月間である程度日本の野球を学び、選手同士でコミュニケーションを取れるようになり、本当の勝負は来シーズン。このように考えると非常に効率は良いです。
2024年度、ファイターズのレイエス選手は入団直後に日本野球の適応に苦しみ二軍降格も経験しました。ただ、徐々に慣れてきて後半戦は手が付けられませんでした。このシーズン序盤の苦しい時期を一つ前のシーズンに持ってくるイメージです。
短期で契約解除が可能な為
最後の理由は短期で契約解除が可能だからです。シーズンオフに外国人選手を獲得した場合、明らかに戦力の見込みがない場合でも1年間契約しなければなりません。ただ、7月末に契約した場合だと、契約内容にもよりますがその年のオフに契約解除ができます。フロントからすればとても嬉しい制度です。
7月末に契約した選手をその年のオフにリリースして、新たに外国人選手を獲得することができます。
また、そんな契約内容でも入団する選手はハングリー精神があって期待できます。ダウンズ選手やヘルナンデス投手はまだホークスに残っているじゃないですか。
枠を開けておく
考えにくいことですが、一軍で勝負できるレベルの選手を獲得できなかったor活躍できる見込みのある育成選手がいなかった場合は枠を開けておくという選択肢もあります。
毎年10月下旬には大イベント「プロ野球ドラフト会議」が控えています。このドラフトで選手を指名するのですが、この指名は無制限ではありません。支配下は70の枠を超えないように指名する必要があります。それに加えて育成選手が昇格する枠なども必要です。
これらの支配下枠をどう作り出すのか。それは「ズバリ選手を減らすこと」です。プロ野球ではホークスにかかわらず毎年10名前後の支配下選手が入れ替わります。かなり残酷な世界です。
つまり今回枠を開けるという選択をした場合、シーズンオフに選手を減らす数を抑えることに繋がります。
また、期待している選手を流出させないために枠を開けておくというパターンもあります。
一軍で活躍するにはもう少し時間が必要な選手を支配下登録して、その年のオフにまた育成に戻そうと仮にするじゃないですか。その選手を支配下から育成に戻す間に「自由契約」を挟むんですよ。これが何を意味するかというと、他球団との交渉が可能になるんです。2024年度オフだと仲田慶介選手や三浦瑞樹投手がこのパターンです。仲田選手と三浦投手はホークスとの交渉を断り、ライオンズ&ドラゴンズへ移籍しました。これは当然のことです。選手層が厚く選手数も多いホークスに居るよりも、ライオンズ&ドラゴンズに移籍する方が一軍で活躍できる確率は高まるからです。
こう考えると闇雲に支配下登録するのもフロントとしては違います。
※仲田選手と三浦投手の場合はどちらも当時プロ3年目だったので、支配下登録の有無は正直関係ありません。分かりやすくするための例です。
育成選手は3年が1つの目安。支配下にならなくても3年経てば一旦自由契約されます。先日支配下登録された宮﨑颯投手はプロ3年目、宮里優吾投手はプロ2年目。同じくリリーバーとして圧倒的な成績を残していたとしても、こういった部分が考慮されて宮﨑投手が優先されたのではないかと感じます。もちろん宮里投手が滑り込みで支配下登録される可能性はゼロではありませんが。
最後に
今回は2025年度支配下枠最後の1枠について深掘りしていきましたがいかがだったでしょうか。
一個人の意見としては、枠を開けておくという選択肢はありえません。一軍で勝負するチャンスを誰かに与えてほしいなと思います。
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