はじめに
福岡ソフトバンクホークスの新たな主砲として期待され、2023年オフに4年契約を結び入団した山川穂高選手(33)。ホークス1年目の2024年度は本塁打王と打点王の二冠に輝くなど存在感を発揮しましたが、2025年度はシーズンを通して不調に苦しんでいます。この不調が単なる感覚のズレによるものなのか、どこかしら体を痛めているのか、それとも選手としての衰えが来ているのかは分かりません。ただ、チームとしては来季に向けて彼に代わる存在を確立しておかなければなりません。
ということで今回は、短期的な補強策と長期的な若手育成の両面から、「ポスト山川」について具体的に考察します。
求める選手像
「ポスト山川」を探すにあたって、まず大事なのがどんな選手を求めるのかを明確にすること。
打って走って守れて、全てがトップクラスの5ツールプレイヤーが山川選手の後釜になれば最高です。ただそれは現実的ではありません。
山川選手の一番の魅力は「長打力」。よって「ポスト山川」として、最低限兼ね備えておきたい特徴は長打力です。
足は遅い。守備はそこそこ。でも本塁打は年間20~40発打てる。そんな選手が「ポスト山川」に相応しいです。
- ポジションは一塁(もしくはDH)
- 年間本塁打20~40発
- OPS.800~1.000
- 守備、走塁は重視しない
- 右打者が理想
これらの特徴を持った選手(今後そうなる可能性がある選手)を探します。打者のイメージとしては2025年度でいえば日本ハムのレイエス選手です。
補強手段
考えられる主な補強手段は以下の通り。
- 現有戦力
- 外国人助っ人
- 国内FA選手
- ドラフト
- トレード
- 現役ドラフト
この中でも特に現有戦力、外国人、ドラフトを軸に主砲探しを進めていきます。
現有戦力
山川選手の後釜が現有戦力の中から現れてくれたなら、それは最高です。
栗原陵矢
栗原選手は今回挙げる選手の中で意味合いが異なります。
2024年度には三塁手としてゴールデングラブ賞&ベストナインのタイトルを獲得したホークス不動の三塁手。今季は怪我もあり、思ったような結果が残っていませんが、体が万全であれば三塁手の一番手で間違いありません。年齢も来季で30歳を迎え、野球選手として最も脂の乗っている時期です。
ただ、栗原選手が怪我で離脱していた間に、野村勇選手、川瀬晃選手、ダウンズ選手がその穴をしっかりと埋めました。また二軍でも高卒1年組からドラ1、育成含め幅広く打って守れる内野手が台頭してきている状況。いずれは栗原選手を一塁で起用するプランがあったとは思いますが、それが前倒しになる可能性は十分考えられます。
石塚綜一郎
石塚選手は2019年育成ドラフト1位でホークスに指名された右のスラッガーです。
三軍四軍での非公式試合、そして二軍戦での成績が突出しており、現在のホークスの野手の中ではトッププロスペクトと言えるでしょう。捕手として入団し、現在は一塁や外野を主に守っている彼が、将来的にどこのポジションで落ち着くのかは注目ポイントの1つです。
石塚選手は元正捕手の甲斐拓也選手と同様、とにかく体が強いことで有名です。過去3年の死球の数がこちら。
- 2023年 非公式試合29個、二軍戦0個
- 2024年 非公式試合12個、二軍戦10個、一軍戦4個
- 2025年 二軍戦21個、一軍戦4個(2025/9/1時点)
プロの選手は怪我をしたくないので、危ない球が来ると避けます。ただ、石塚選手の場合は避けません。避けたふりして当たりに行くこともあります。このように、踏み込ませないためにインコースを攻める投手と、その球を一切怖がらない石塚選手によってこの年間30近くの死球が生まれています。
正木智也
正木選手は選球眼の高さと長打力を兼ね備えた総合力の高い打者です。外野手登録ですが一塁も守ります。
プロ1年目と3年目の活躍を見る限り、その打撃のポテンシャルは間違いありません。今季2025年度は怪我で長期離脱となっていますが、来季はしっかり鍛え上げた体で大爆発を期待したいところです。
外国人助っ人
ホークスは過去にズレータ選手やデスパイネ選手等を獲得し、打線に即戦力を注入してきました。再びMLBや他チームから右の長距離砲を連れてくるシナリオは十分考えられます。
ただ、外国人といっても範囲が広すぎます。今回はMLBの選手に特化して、尚且つ移籍現実度の高さで分類して紹介します。
現実度:高〜中(NPB移籍の可能性をイメージしやすい層)
- J.D. マルティネス(DH)
2025年春時点でFAとして報じられた、打撃特化のベテラン。NPBのDH専任需要にハマりやすいタイプ。40歳手前ではあるもののxSLGは依然高水準との評価もあり、“一年限定の即戦力砲”としては現実的。 - ミゲル・サノー(1B/3B)
右の長距離砲。近年はMLB定着が途切れているものの、パワーは健在。マイナー/独立やウインターL経由の再挑戦が続いており、NPB挑戦のハードルは比較的低い層。
現実度:中(条件が合えばワンチャン)
- ルイス・アラエス(1B/2B)
MLBで首位打者を三度も獲得している左のアベレージヒッター。本来MLB一線級の市場価値ではあるものの、2025年度の年俸は約21億円とホークスなら辛うじて手の届きそうな範囲。ただ基本はMLB残留前提。 - リース・ホスキンス(1B)
右の長距離砲。2025年はプレイヤーオプションを行使して残留、2026年は相互オプション。長打特化でNPB適性は高いが、まずはMLBでの再評価が先。
現実度:低(“名前は超一流、現実性は薄い”=情報としての押さえ)
- カイル・シュワーバー(LF/DH)
2025-26オフの目玉打者枠。NPBに来るレベルの年俸帯ではなく、MLB上位球団が本線。 - アレックス・ブレグマン(3B)
同じく25-26オフの超大物。三塁の守備価値+出塁力が売りで、NPB移籍の現実性は極めて低い。 - (参照)今オフ各球団の“最大FA候補”一覧
2025年オフの大型FA選手の把握用。NPB向きの価格帯ではないが、マーケットの流れを掴む材料に。 (MLB.com)
国内FA選手
主に一塁・DHで活躍できる大砲で、FA市場に出ていそうな選手がいれば狙い目。ただし、2025年オフに関しては山川級の選手は希少で、難易度は高めです。
岡本和真
巨人の主砲、岡本和真選手は2025年オフにMLB移籍が濃厚な選手。
ただ、もし今季取得する国内FA権を行使するようなことがあれば、争奪戦は必至です。
99.999%メジャーだと思いますけどね。
ネフタリ・ソト
今季国内FA権を取得し、2026年度からは日本人枠になる千葉ロッテマリーンズのソト選手も獲得候補には入ります。
ただ、以前獲得したバレンティン選手のこともあり、年齢を重ねた助っ人外国人の補強には消極的な姿勢が予想されます。成績も年々下降していますしね。
ソト選手がNPBにやってきた2018年以降、毎年二桁本塁打を放ち大きな怪我もしていないことを考えると計算が立ちやすい選手ではあります。
ドラフト
2025年ドラフトでは将来の主砲候補が多数。それらの選手を狙う可能性は十分考えられます。
立石正広
2025年ドラフトの目玉。右の大砲。複数球団による競合が予想されます。
走攻守全てで力を発揮できる選手で、特に長打力に関してはアマチュアトップクラス。逆方向にも放り込むパワーを兼ね備えています。
守備位置は一塁と三塁だけでなく、大学4年時から二塁にも挑戦。ユーティリティー選手の多いホークスにフィットする選手に成長しました。
佐々木麟太郎
高校通算140本塁打(歴代No.1)という圧倒的な実績を誇る左の大砲。花巻東高校からアメリカのスタンフォード大学に進んだことで、2025年度のNPBドラフトと、2026年度のMLBドラフトの両方で注目を集める選手になりました。
ただ、ポスティング移籍を認めている球団にしか行かないのか、そもそもNPBとMLBのどちらに進むのか。これらが一向に見えてこない中で指名に進むのはホークスにとってかなりのリスクがあります。
本塁打が魅力の選手なだけに王会長は間違いなく好きな選手ですが、そこの情報をしっかりと精査した上で指名に踏み切る必要があります。
トレード
外部からの戦力補強策として、トレードも完全には否定できません。横浜の主砲、多村仁選手をトレードで獲得したという事例もあります。
ただ、現NPBにおいて長距離砲は貴重な存在。2022年以降、年間30本塁打以上を記録した選手が3名を超えたことはありません。現実的に考えて、主砲クラスをトレードで獲得するのは厳しいです。
現役ドラフト
中日の細川成也選手や日本ハムの水谷瞬選手(元ホークス)等、現役ドラフトを機に花開いたスラッガーはいます。ホークスも今年の現役ドラフトではそんな潜在能力が高く伸び悩んでいる選手を狙うかもしれません。
ただ、これは運もあるので、現段階では何とも言えません。
まとめ:誰がポスト山川になるか?
- 今季即戦力として外部補強を断行する可能性
- 長期的には石塚綜一郎選手を中心に、若手育成を構築
- その最適解は“補強と育成の融合”にあり
選手は毎年毎月毎日体の状態や打撃の状態が異なります。山川選手も来年は本来の姿を取り戻すかもしれません。それらを総合的に判断しつつ、ポスト山川の育成も進めていく必要があります。
ある1つの選択肢に固執するのではなく、これが駄目だったらそれ、それも駄目だったらあれと、柔軟に変えていくことでチーム力がガクッと落ちるのを防げます。
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