今回のテーマは2024年度福岡ソフトバンクホークスの捕手事情について。
2024/6/27現在、ホークスに在籍している捕手は支配下・育成合わせて11名。
この選手達が、現在チーム内でどのような立場に置かれているのか、またそれぞれの個性は何なのかを深掘りしていきます。
※あくまでも個人の見解です。
()内は2024年終了時点の年齢
嶺井博希(33)
「代打で出場機会を増やしていきたいベテラン捕手」
嶺井博希選手の捕手としての基本的な能力(取る、投げる)は、一軍でプレーしている選手と比較すると劣ってます。
特にスローイングはホークス捕手全体で最も悪いです。
今季が4年契約2年目(2026年まで契約が残っている状況)で、正直起用しづらいベテラン捕手ということは言えます。
そんな嶺井捕手が存在価値を見出すとしたら「代打」です。
今季は6/27時点で、全て途中出場ながら6打数3安打1本塁打3打点と少ない打席で結果を残しています。
チームが大量リードを許している時に、途中から出場して打で貢献する形を多く作ることができれば、嶺井選手の出場機会は増えると思います。
その形を作るためにも、まずは二軍で安定した打撃成績を残さなければなりません。
嶺井選手が二軍で好調、そして一軍では先発投手が早い回で降板することが増えている。
このような状況になれば大チャンスです。
また、DeNA時代は正捕手として活躍していた時期があるので、その経験を二軍三軍四軍の若手選手に伝えるというコーチのような役割も期待されます。
甲斐拓也(32)
「国内FA権を取得した正捕手」
甲斐拓也選手は、2023年度までは絶対的な正捕手として、常に試合に出るのが当たり前になっていました。
ただ、今季は違います。
春季キャンプで第二捕手争いを勝ち取った海野捕手が、大津投手や大関投手、和田投手が先発時は先発マスクを被るようになっています。
これは甲斐選手の負担軽減と、今季国内FA権を取得した甲斐選手の流出という2つ意味があります。
流出しないかもしれませんし、怪我しないかもしれませんが可能性がゼロじゃないので当然の采配です。
そしてその采配が良い意味で相手打者をかく乱させることに繋がり、甲斐選手にとっても打席により集中することができ打撃成績が向上してます。
現在の甲斐選手は体の強さ、ブロッキング技術、打撃、全てにおいて日本球界トップクラスの捕手です。
盗塁阻止率に関しては投手のクイックの兼ね合いはあるものの、もう少し全盛期の数字に近づけたいところです。
谷川原健太(27)
「走れる崖っぷち捕手」
藤本政権時は持ち前の走力肩力を活かし、捕手だけでなく外野の守備固めとしても活躍した谷川原健太選手。
ただ、捕手一本に絞った今季は第二捕手争いで海野選手に敗れました。
昨年は海野選手との第三捕手争いを制していただけに悔しい結果です。(その時の第二捕手は嶺井選手)
昨年から小久保政権がスタートしていたら、もっと起用されて海野選手が今頃崖っぷちだったかもしれません。
このようにプロ野球は実力だけでなく運も大事です。
二軍で攻守にアピールできていたら一軍昇格のチャンスも巡ってきますが、6/27現在で目立った活躍はできていません。
むしろ守備で数字に表れないミスや、盗塁を許す場面が数多く見られます。
打撃を見ても長打が少なく、打率も寂しいです。
6月はチームトップの4盗塁を記録しているので、足だけで勝負するならチャンスはありますが、捕手一本と決めている以上、外野の守備固めとしても起用できないので本当に起用する場所が無いです。
甲斐選手、もしくは海野選手が怪我をした時にどれだけ良い状態でいれるかが勝負です。
渡邉陸選手や牧原巧汰選手と同じような成績では一軍昇格は難しいと思います。
海野隆司(27)
「信頼を勝ち得た二番手捕手」
一昨年は47試合に出場したものの、昨年は谷川原選手との第三捕手争いに負け8試合出場に留まった海野隆司選手。
今年の春季キャンプでは打撃面のレベルアップをアピールし、見事に第二捕手の座を勝ち取りました。
そして6/27現在も、試合を作るリードで首脳陣からの信頼を勝ち得て一軍に帯同しています。
捕手としての能力もブロッキングは昨年と比べて格段に向上しており、後ろに逸らすことがほとんどなくなりました。
スローイングはデータは取ってないものの、甲斐選手よりも断然盗塁を刺してる印象があります。
クイックが遅いスチュワート投手やクイックをしないオスナ投手でも刺していたのでこの肩は本物です。
甲斐選手がもし今オフに移籍となった場合は、海野選手にかかる責任はより一層大きくなります。
渡邉陸(24)
「近い将来に正捕手を掴まなければならない捕手」
ポテンシャルの高さはずっと前から言われていた渡邉陸選手。
2022年度はプロ初スタメンでカープの森下投手から逆方向に二打席連続本塁打、楽天の則本投手からも本塁打。
ホークスファンに衝撃を与えました。
当時二軍監督だった小久保監督は彼の将来に大いに期待していたはずです。
そして今年の春季キャンプでは彼をA組に抜擢。
ここでアピールして、まずは開幕一軍を掴み取りたいというところでいきなりの怪我。
出鼻を挫かれました。
それでも地道にリハビリを重ね4月下旬に実戦復帰。
6月は62打席で打率.244,出塁率.311,長打率.463,OPS.775とまずまず素晴らしい打撃成績を残しています。(6/27時点)
彼は年齢的に若手というよりも中堅と言った方が正しいです。
嶺井選手、甲斐選手、谷川原選手、海野選手の次だからです。
そろそろ正捕手を目標に結果を残さなければなりません。
守備を完璧にするのもそうですがまずは打撃。
3割30本打てれば多少のミスは許されます。
吉田賢吾(23)
「山川穂高選手のバックアップ」
3割30本100打点の打撃成績を残せるスーパーキャッチャーを目指して入団した吉田賢吾選手。
彼は現在、ファーストの守備をメインでやってます。
捕手としての能力を考えた時に、スローイングの部分でどうしても他の選手と比べると劣るので、そこを改善させることに時間をかけるよりも、試合に出れる場所で出た方が吉田選手の野球人生にとってプラスに働くという現段階での判断なのでしょう。
将来的に捕手として活躍しているイメージも十分できます。
吉田選手の大きな特徴は、ヒットや本塁打だけでなく走者を進める打撃や犠牲フライを狙って打つことができる卓越した打撃技術。
そしてそのような打撃をイメージできる野球IQの高さもあります。
たまにインコース低めの球を凄い打ち方でライト前まで運ぶ時がありますが、あれはまさに打球方向を決めて打ってます。
彼の憧れは内川聖一選手だそうですが、まさにそのようなイメージです。
2024年度は山川穂高選手がもし怪我をした場合や今の不調が長引く場合に、井上朋也選手、野村大樹選手、リチャード選手等と一軍のファースト枠を窺う立場ですが、今年はこの中で井上選手と吉田選手だけが一軍での出場機会を貰えてないので、そろそろ最初のチャンスは貰えるだろうと思います。
また井上選手はどちらかというとサード栗原選手のバックアップ要員なので、ファーストだと吉田選手が優先されるだろうと個人的にはみてます。
また、開幕から主に代打として出場している中村晃選手のポジションを狙うというパターンもあります。
代打もしくは一塁スタメンで活躍できるように、今は二軍で代打でもスタメンでも結果を残してほしいです。
1死三塁の場面で三振をせず、ゴロや外野フライを確実に打てるかという細かい部分も大事な要素になってきます。
石塚綜一郎(23)
「近藤健介選手のバックアップ」
吉田賢吾選手と同様、打力を買われて外野に挑戦中の石塚綜一郎選手。
2023年度は三軍四軍の非公式試合で22本塁打を放つなど長打力をアピール。
今季は二軍で68打席に立ち、打率.314,出塁率.471,長打率.569,OPS1.039と文句無しの打撃成績を残しています。(2024/6/27時点)
今季序盤は佐藤直樹選手が二軍で猛アピールをしていたこともあり、同じ育成の石塚選手は出場機会に恵まれませんでしたが、佐藤選手が支配下に返り咲いた今では二軍の主力として活躍しています。
※育成選手は二軍戦に1試合最大5名までしか出場できないので、育成外野手を1試合に2選手も起用するのは稀。
2024年シーズンは一軍で出場するなら外野手としてだと思います。
捕手として全く出場していないので。
個人的には外野の練習をどれだけやっても「捕手石塚綜一郎」を捨てないで欲しいですが。
ホークスの6月の一軍外野陣は常時スタメン起用が近藤健介選手と周東佑京選手。(近藤選手は右手負傷の影響でここ最近はDH起用)
柳町達選手、正木智也選手、佐藤直樹選手は日替わりでスタメン起用。
川村友斗選手、緒方理貢選手は代走守備固め起用が多め。
だいたいこのような状況です。
プロ初本塁打を放つなど存在感を発揮した笹川吉康選手を二軍に置いておける余裕があります。
この争いに石塚選手が加わるためには「とにかく打つ」しかありません。
本職ではないので外野守備で張り合うことができないからです。
守るとしたらレフト。
そしてレフトを守るとしたら現日本球界No.1打者の近藤選手レベルで打つ必要があります。
近藤選手がレフト守備に就く時は右の代打、近藤選手がDHの時はレフトでスタメン出場、もしもの時の第三捕手。
こんな起用をされるのが理想です。
そしてそんな起用をされるためには、正木智也選手の6月二軍成績が一つの目安になります。
打率.453,出塁率.540,長打率.811,OPS1.351。
月間でこれだけ打てれば支配下登録は間違いなく勝ち取れます。
支配下登録を勝ち取った上で、あとは他の選手との兼ね合いです。
牧原巧汰(22)
「打撃が魅力の将来の正捕手候補」
高卒1年目には井上朋也選手と共に春季キャンプでA組に参加した牧原巧汰選手。
そしてその実戦形式でいきなり杉山投手の速いストレートを弾き返しました。
この時は相当期待をかけられていたはずです。
ただ、2023年度は三軍四軍の非公式試合で11本塁打を放つなど長打力をアピールしたものの、プロ3年で一軍出場はゼロ。
二軍に定着することすらできていません。
同世代の捕手が捕手能力はそんなに変わらなくても、牧原選手以上に打つのでなかなか出場機会が巡ってこない状況でした。
ただ今季は開幕から二軍戦での出場が続いてます。
これはなぜかというと、吉田賢吾選手や石塚綜一郎選手のような同じく打撃型の捕手が捕手をしていないからです。
牧原選手にとってはまさしく大チャンスです。
二軍出場を積み重ねることによって、徐々にプロの球に対応してきており、6月は打率.333,出塁率.429,長打率.444,OPS.873と素晴らしい成績を残しています。(2024/6/27時点)
直近のライバルは2歳年上の渡邉陸選手。
同じ打撃型捕手として負けていられません。
また、2歳年下の盛島稜大選手も力を付けてきています。
上だけでなく下の世代も見ながらアピールをする必要があります。
今季はチーム状況が非常に良く、もしかしたら終盤戦に若手を一軍で経験させようとする動きがあるかもしれません。
そうなった時に捕手の一番手でいられるように、打撃守備両面でレベルアップを図っていきたいところです。
加藤晴空(21)
「ホークスの若手の中では目立たない捕手」
今季がプロ3年目の育成捕手、加藤晴空選手。
彼は現在、ホークスの中では埋もれている存在です。
なにか1つでも突出した部分があれば変わってきますが、打撃守備両面で目立ったアピールができていません。
三軍の現在の主戦捕手は1歳年下の盛島選手。
6月の三軍出場試合数は盛島選手が14試合、加藤選手が8試合。(2024/6/27時点)
当然打席数も盛島選手が49で加藤選手が17。
ホークス球団は加藤選手ではなく盛島選手を将来の正捕手として育成するために三軍を活用しているといっても過言ではありません。
このままだと加藤選手のプロ野球人生が終わってしまうので、何かこれだけは負けないというものを身につける必要があります。
盗塁は絶対に刺す。
投球を後ろに逸らさない。
加藤捕手が守っている時は点が入らない。
二塁打を打つことに関してはNo.1。
バント、進塁打、犠牲フライといった細かいプレーを確実にできる。
盗塁成功率100%。
例えばこの中のどれか1つでも強みにして、まずは来季の契約を勝ち取りたいところです。
盛島稜大(20)
「強肩強打の将来の正捕手候補」
入団時から体が出来上がっていた盛島稜大選手。
プロ1年目に打席に入る姿を見て、本当に1年目かと目を疑いました。
スピード感には押されていたものの、強いスイングで自分の形を崩さずに三振していたからです。
187㎝92㎏という大きな体格も相まって、大物感がプンプンと漂っていました。
捕手ということでどんなセカンド送球をするかと期待して見てみると、本当に矢のような送球。
なぜこのような選手が2022年ドラフトで最後の最後まで残っていたのか驚きです。
もしドラフトで指名されずどこかの大学で4年間プレーしていたら、ドラフト1位でないと獲得できない選手になっていたでしょう。
まさしくホークススカウトの大ファインプレーではないでしょうか。
結局1年目は結果を残せませんでしたが、2年目の今季は3/6三軍戦でいきなり2打席連続本塁打を放つなど強烈な打撃を見せてくれました。
直近では6/22三軍戦で8回に同点の3ラン本塁打。
ここぞの場面で打つプロ野球選手としての華も併せ持ちます。
城島健司会長付特別アドバイザー兼シニアコーディネーターも一目置く存在の彼が、今後どのような成長を遂げるのかに注目です。
おそらく来季は二軍が主戦場になるのではないでしょうか。
藤田悠太郎(19)
「強肩が魅力の将来の正捕手候補」
持ち味は強肩で身長は170㎝、甲斐拓也選手を彷彿とさせるのが藤田悠太郎選手。
入団時は本当に小さく、今でもホークスの全選手と見比べると藤田選手が一番小さく見えます。
これからしっかりパワーを付けて、他の選手と張り合えるぐらいの体になってほしいです。
ただ、まだ体は出来上がっていないものの肩はもの凄いです。
どこにそんなエンジンを蓄えているのかというぐらい、低くて強い送球をします。
まさに甲斐拓也選手です。
まだまだ投球を後ろに逸らす場面があるので、ブロッキング技術を身につけ、安心して守備を任されるような捕手をまずは目指すべきではないかなと思います。
高校通算43本塁打の打撃をアピールしていきたいところですが、まずは守備からです。
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