9月。ペナントレースの行方が佳境を迎える一方で、選手たちの“去就”をめぐる戦いも最終局面に差し掛かっています。支配下選手にとっては「支配下選手として残るか、育成選手になるか、ホークスを退団するか」が決まる運命の1ヶ月になります。
ホークス現在の支配下枠は69。ドラフトで5名、育成→支配下で5名と考えても支配下枠は最低10は空けておかなければなりません。また、モイネロ投手が2026年度から日本人枠になることで、新たに外国人選手を連れてくる可能性も十分考えられます。支配下選手だけで最低10名の構想外は覚悟しておいた方が良いでしょう。
ということで今回は心苦しいですが、ホークス支配下選手の中から10名の構想外候補を挙げていきます。
先月8月の考察はこちら。
牧原巧汰(捕手・23歳)
4月から構想外考察をスタートし今回が6回目ですが、その全てで名前が挙がっているのが牧原巧汰選手。
プロ5年目となり、正捕手甲斐選手がいなくなり、牧原選手からすれば大チャンスかつ背水の陣のシーズン。打撃でも守備でも何でもいいので目立てば使ってもらえる、そんな状況でした。
ただ現実はそう甘くなく、二軍で結果を残せず現在は三軍暮らしが続いてます。(たまに二軍でも起用してもらえるが育成選手のような起用頻度)
ただ打撃面を見ると、確実性には課題があるものの打球が飛ぶツボを持っている選手。プロ野球選手の中で体が大きい方ではないにもかかわらず、センターから逆方向にスタンドインさせるパワーがあります。そのパワーを残り1ヶ月でとんでもない程アピールできたなら、大逆転での支配下残留があり得ます。
村田賢一(投手・24歳)
「決め球」シンカーを武器に打たせて取る投球を繰り広げる技巧派右腕の村田投手ですが、現代野球は球速至上主義。現在ホークスの中継ぎ投手は左変則サイドの大江投手を除き全員150キロ以上のストレートを投げれます。上茶谷投手は先日、150キロの大台をクリアして一軍に昇格しました。逆に川口投手は疲れからか150キロのスピードが出なくなり、二軍へ降格しました。
村田投手は先発で投げてるときは平均140キロ前後、中継ぎでも平均140キロ前半のストレートしか投げれません。そうなると、どうしても優先順位は低くなります。
二軍で先発として結果を残している板東投手でさえ球速が出ていないことで一軍に上がれないので、二軍でも防御率4点台の村田投手が一軍に上がるのは厳しいです。
残り1ヶ月で球速が大幅に向上するようなことがあれば、大逆転での支配下残留があり得ます。
長谷川威展(投手・26歳)
トミージョン手術明けの長谷川投手は、今季中の復帰が絶望的な状況。昨季の澤柳亮太郎投手と同じです。戦力としては見ているものの、枠を空けておきたいということで、一旦育成契約にする選択肢は十分考えられます。もちろん長谷川投手の回復次第では、そのまま支配下選手として契約し続けるでしょう。
同じくトミージョン手術を受けた宇野真仁朗選手も、一時的に育成選手として再契約する可能性はゼロではありません。ただ彼の場合は高卒1年目の今季から同期の石見選手と共に二軍で頭角を現したトッププロスペクト(打率.391、OPS.819)。競技復帰したらすぐに二軍で起用し続けたいので、三軍二軍で結果を残し続けなくてもすぐに支配下登録されます。そうなると、育成選手にとってはモチベーションの低下に繋がります。つまり、宇野選手をシーズンオフに育成にするのは悪手です。競技復帰予定は4月の頭なので、それまでにフィジカルをさらに高めてもらいましょう。
又吉克樹(投手・34歳)
NPB通算503登板と実績は申し分なく、今季も二軍で投げているものの球の衰えは感じません。
ただ、この年で再び先発に挑戦したり、また中継ぎをやったりと役割が安定しない中での登板が続き、投球スタイルもいろいろ試しながらというところで圧倒的な結果を残せていません。
ベテラン選手は二軍で若手選手と同じかそれ以下の成績を残しているようだと、構想外まっしぐらになってしまいます。また若手選手だと今年駄目でも来年頑張ろうとなりますが、ベテラン選手は1年1年が勝負です。
東浜投手と共に投手最年長の又吉投手はそういう立場の選手です。
板東湧梧(投手・29歳)
一軍での登板は2年連続でゼロ(2024年、2025年)。一昨年までの立ち位置を取り戻せないまま終盤を迎えています。板東投手に求められるのは“出力UP”。これだけです。投球内容は良かったり悪かったりがありますが、根本的な部分が理由で一軍に上がれていません。
板東投手が今のスピードでできる最大限の投球を心掛けているのに対し、球団が求めているのは以前のように150キロ前後のストレートと落差の大きなフォークで三振を奪う姿。
こう考えると、板東投手はこのままホークスにいるよりも他球団へ移籍した方が幸せなのかもしれません。
井上朋也(内野手・22歳)
将来の中軸として期待され2020年ドラフト1位でホークスに入団した井上選手。ただ、その成長曲線は球団が期待したものとはかけ離れていました。
1年目から二軍で本塁打3本,OPS.702と結果を残し完成度の高さを窺わせました。ただそこから早5年、打撃面は何も変わっていません。本塁打を量産することは無く、かと言って成績が極端に落ちることもなく。
守備は間違いなく向上しました。守備範囲の広さと肩の強さは一軍レベル。守備範囲が広いが故にエラーを記録する場面もありますが、投手は井上選手の守備にかなり助けられているはずです。
そんな井上選手を球団はどのように見ているのでしょうか。
守備固めとして考えているのならば支配下として残すでしょう。ただ、井上選手が守る一塁三塁は一般的に「打撃のポジション」。最近守り始めた左翼も打撃のポジション。村上宗隆選手、岡本和真選手、佐藤輝明選手、山川穂高選手…。このような強打者が務めるポジションです。未来の大砲として投資する価値がないと判断されれば当然リリース候補になります。
残りの1ヶ月、井上選手は大爆発して来季の戦力となれるでしょうか。
川村友斗(外野手・26歳)
6回に渡って構想外予想を繰り広げていきましたが、今回始めて名前を挙げたのが川村選手。昨季は守備固め&代走&スタメンと幅広く一軍起用され、結果も残していた選手です。
そんな彼を構想外候補に選んだ理由は、「外野手の層が厚いから」です。川村選手の場合は外野手の中でもセンターラインを守れる選手として重宝される存在。打撃でもリストの強さを活かして、上林選手のように打球を飛ばします。
ただ、今季は怪我もあって、なかなか本来の打撃が出せていません。非常に分厚い外野手の選手層に埋もれてしまっている状況です。また外野守備固め・代走に限ると、緒方理貢選手や佐藤直樹選手が一軍の中で存在感を発揮しています。3~5年後のセンター候補としてなら可能性はあるように思えますが、川村選手よりも3歳若い笹川吉康選手(23歳)が着々と力を付けてきています。
川村選手に力があるのは確かですが、その力を出せる環境が無いのであれば他球団に移籍した方がメリットが大きいです。個人的には構想外というよりも現役ドラフトの方がしっくりきます。かなり人気が出るのではないでしょうか。
廣瀨隆太(内野手・24歳)
廣瀨選手はホークス入団時に誰もが思い描いたスタイルからどんどん離れています。
東京6大学の本塁打記録に名前を刻み、プロでも同じようなスタイルで浅村選手や牧選手のような「強打の二塁手」として活躍することを期待されていました。ただ、現在は四球を選べて、右打ちやバントを器用にこなす普通の二塁手になっています。守備の安定感も向上し、特に言うことは無いんですが、将来的に彼がホークスの中軸として働くイメージは湧きません。
また、小技ができる二塁手としてこれからやっていくのであれば「走力」という武器も必要です。ただ、廣瀨選手は足で魅せるタイプの選手ではありません。
廣瀨選手より若い二遊間選手のアピールもあり、今後チーム内の優先順位がさらに下がっていくことを考えると、構想外という可能性もゼロではないのかなと思います。
濵口遥大(投手・30歳)
DeNA時代の実績は十分。ただ、今季は病気や怪我の影響もあってか、なかなか球速が出ていません。
ストレートのスピードは140キロ前後。本来は決め球のチェンジアップで空振りを取りたいところですが、緩急を付けることが出来ていないためバットに当てられています。
ホークスは「球速が命」の球団なので、ここから特に出力が上がることなくシーズンを終えたなら構想外という可能性も十分考えられます。30歳を超えた選手は、過去にどんな実績を残していても1年1年が勝負です。
有原投手や東浜投手のFA移籍を先読みするのであれば、先発経験豊富な濵口投手は残しておかなければなりません。
安德駿(投手・23歳)
安德投手のプロ1年目はコンディション不良から始まりました。そして、投げれるようになってからは本来の球威・制球を取り戻すのに苦労しています。
1年目なのでまだ様子を見ておきたい気持ちはあります。ただ、即戦力として取った右投手が二軍でも存在感を発揮できていないとなるとチーム内での優先順位は下がってしまいます。正直2024年ドラフトで支配下指名された大学生は安德投手を含めて全員イマイチです。その中でも1人選ぶとするなら安德投手かなと思います。
今オフは育成再契約になるのかどうなるのか分かりませんが、来季の巻き返しに期待です。
最後に
戦力の見極めは本当に難しいです。
- 全く戦力として活躍できなかった選手が花開く
- 元々戦力として活躍していた選手が全然ダメ
- 昨年は戦力、今年も戦力
- 昨年はダメ、今年もダメ
これらの判断を全選手に下したうえで、支配下70枠をうまく回さなければなりません。
現日本ハムの水谷瞬選手はホークスフロントの失敗パターン。ホークスでは一度も一軍の試合に出たことが無かったものの、現役ドラフトで移籍すると一気に日本ハムの主要戦力になり、2025年春には侍ジャパンに選ばれました。
逆にホークスの杉山一樹投手はフロントの成功パターン。ポテンシャルの高さはチーム随一だったものの、ストライクを取れずに自滅することが多かった彼を我慢して契約し続けたことで2024年のブレイクに繋がりました。そして今や守護神です。もしも諦めて戦力外もしくは現役ドラフト、トレード等で放出していたら「ホークスの守護神杉山一樹」は生まれていませんでした。
今年で言えば、今回名前は挙げていませんが武田翔太投手の判断は非常に難しいです。現在はトミージョン手術明けということもあり本来のパフォーマンスを出せていません。また4年という長い複数年契約期間中に全くと言っていい程働きませんでした。ただ、トミージョン手術を行った後の体に慣れた時に球速が上がる投手が多数存在しているのは事実。武田投手も来年辺りにはレベルアップした姿が見られるかもしれません。
以前ホークスにいたロベルト・スアレス投手も肘を故障しトミージョン手術を行い、復帰直後は思ったような投球ができませんでした。ただ、術後2年目に阪神へ移籍すると絶対的守護神として活躍し、今やメジャーリーグの舞台で大活躍中です。
このように過去の事例からも学びながら、全ての可能性を踏まえた上で来年に向かっていく必要があります。武田投手だけじゃないですよ。ホークス選手全員です。
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